節電です!



「寝ましょう!」
 と、いきなり菊が、キモノの袖を振って両手で拳を作る。
 が。
「は?」
 何だ、唐突に。
 訳が分からず、ぽかんとザタクの向こう側で鼻息荒くする菊を見てしまうと、菊の大きな目がキッと鋭くなった。
「何を呆けているんですか?今テレビで言っていたじゃないですか、電力が足りないって。だから、早く寝て電力消費を抑えるんです!」
「ああ……」
 なるほど、そういうことか。確かに先程、今はまた被災地の映像を映しているニュースで、トーキョー電力がどうのこうのって、官房長官が計画的に停電をさせるって発表していたが。
(それ聞いて、いきなり早寝ってのは……)
 早急過ぎないか?まだ10時前だぞ?
 つーか。
「ただでさえうちは未明まで起きていることが多くて電力を消費しまくっている訳ですから、こういう時くらいは早く寝て節電しなければ……」
「……悪ぃんだけど、うちが未明まで消費しまくってんのは、お前がPCで遊んでるからだろ」
 だと思う。ぶつくさ続ける姿に指摘すると、うっと菊は息を詰めて赤くなった。
「そうですけど…」
「だろ?」
 まるで俺まで一緒になって消費しまくってるみたいな言い方だったが、はっきり言って真夜中の電力消費率のうち99パーセントは、菊のPCかPS3かX-boxかの電力だ。残り1パーセントである俺の使ってる電力なんて、菊が寝に来るのを待っている間、フトンの中で読んでる本を照らしてくれるためのランプくらいのもんだっての。そこんところは、ちゃんと把握しておいて貰わないと。
 ―――と思ったから指摘したんだが、素直に認めた顔が、すぐに生意気な表情に変わる。
「でも、ですから、2525動画の実況もヨツベの無料ドラマも深夜アニメも……ああ今日良いところだったのに…どうせ放送してませんが……あとフランシスさん達とのオンラインゲームも全部全部諦めて…あ。ツイッターだけは見ますけど、それは携帯でやるとして……とにかく!早く寝ようと思う次第でっ……アーサーさんだって私が寝れば起きていないでしょう?だったら何の問題もないじゃないですか」
 ……いや、何言ってるか良く分からないんだが。
「まぁそうだな…」
 別に俺は夜更けまでうだうだ起きてようなんて思わないから、菊が早く寝るってなら、それで構わない。ので、そう、感情とコメントを挟んで捲し立てた菊に返すと、何故か菊は満足げに勝ち誇った顔をした。意味分からん。
(ていうか、お前は夜中にどれだけ活動してんだよ)
 夜行性の動物か何かか。どちらかというと、そこについて深く話し合いたい。特に、ヒゲ云々の辺り。
 しかしそこを追求する前に、話は終わりという風に、そそくさと菊がザタクの上のものを片付け始めた。
「では、カップはもう洗ってしまいますね。アーサーさんはお風呂に入ってらして下さい」
「へ?」
「今、お湯を入れて来ますので」
「え?あ、ああ……」
 おいおい、行動早いな。いつもはとろいくせに、やると決めたらやたらと迅速になるから不思議だ。まだ飲み掛けの俺のカップまでオボンへ引き取ってしまう。洗いに行くんだろう、でも、それなら。
「でも、それなら一緒に入ったほうが効率良いんじゃないか?」
と思う。
 何気なく口にすると、菊の手から持っていたシュガーボウルがゴトンと落ちた。
「おいっ、危ねぇな」
 ミルクジャグじゃなくて幸いだ。ガチャンと厭な音をさせたシュガーボウルを取ると、菊が真っ赤な顔を向けてきた。
「っだって!アーサーさんが変なこと言うから…!」
「は?」
 そうか?
「効率考えたら一遍に入ったほうが良いだろ。早く寝たいんじゃなかったのか?」
 そういう話だった気がする。ただでさえ菊は風呂が長いし、俺が入った後に入るとなったら、結局二人とも夜中まで起きてることになっちまう。だったら同時に入って、俺が先に上がって洗い物をすれば良い訳だし……
(ん?)
 あれ?俺、もしかして変なこと言った?
「そですけどぅ……変なこと…しませんか…?」
 と、上目遣いにもじもじとして訊いてくる菊のほうがよっぽど変だと思
(あ)
「………――――――〜〜〜〜〜〜〜〜〜!こっ、馬鹿!するか!」
 何考えてんだよ!
 思わず怒鳴ってしまうと、ひゃうっと菊の身が小さくなった。あ、いや。
「ぁ、わり…」
 怒鳴るつもりはなかったんだ。ただ、えっと、その……ああくそ。こういうところが俺の悪いところだ。いつも話を聞かないアホ連中を相手にしてるから、どうもすぐに声を荒げるのが癖になってる。相手が、ちゃんと話を聞いてくれる菊だと分かっていても。だから困る。気を付けてはいるんだが……不注意で縮こまらせてしまった菊に謝ろうと、手を伸ばす―――前に。
 ちらっと菊が見上げてきた。何処か怯えながら、
「そ、そう言って前も、へ…変なことしてきたじゃないですかっ……アーサーさん、変なことするの好きですし……」
 って。
「―――俺を変態趣味みたいに言うな!!」


***


 とたとたと軽く、廊下を歩いてくる音がする。もちろんこの家には俺の他にはもう一人しかいないから、誰だかは分かっている。
「アーサーさん。お風呂上がりました」
「おう。こっちもちょうど終わったとこだ」
 拭き終わった食器の最後を棚に仕舞い、扉を閉めて、声のしたキッチンの入口へ向くと、同じ柄のユカタのを着てバスタオルを肩に掛けた、風呂上がりの菊が微笑んで立っていた。ああ……
(誰が何と言おうと、俺の嫁がこの世で一番可愛い)
 ではなく。
「おい……ちゃんと髪乾かしてこいよ」
 湯上りピンクの肌色をした菊の長い黒髪は、まったく濡れたままだ。
「そんなに俺一人にやらせるのが心配か?」
 食器洗いを。“効率を考えて”フトンを敷いてから二人で風呂に入り、俺が先に上がって片付けに来た次第だが、これくらいは本国にいたときもやってたし、料理だって出来るんだから、心配なんていらないのに。年齢的には菊のほうが上だが、この春先に髪を乾かさないで歩いているなんて余程俺より子供だと思う。不満ありつつ……ちょっぴり、本当にちょこっとだけだ!嬉しさありつつ、肩のバスタオルを取って頭一つ分下にある小さな頭を拭いてやりながら尋ねると、菊は真剣な顔をした。
「いえ、そろそろ東京電力のホームページにアクセス出来るかと思いまして」
「………あっそ」
 やっぱ可愛くねぇ。目を輝かせる姿がこの上なく憎らしい。
(まぁ、大人しく髪拭かせてくれるようになったところとか、大分マシになってきたか)
 結婚前だと、少しいちゃつこうとするだけでジュードーで投げられたりしたからな。
 それを考えれば大分可愛らしくなってきたが、そんなこちらの思いを余所に、さっと軽快に菊がバスタオルから擦り抜ける。にこにことして、
「私見てきてしまいますから、アーサーさんは先にお布団へ行っていて下さい」
 と、くるりと背を向けて、小走りに居間へと、って。
「え?あっ、おい!」
 お前、髪濡れたまんまだろ!
 ったく、マジでどっちが年上か分かんねぇ。調べるのなんて髪乾かしてからでも遅くねぇだろうが。さっきバスルームで、アクセス集中してるだろうからすぐには見れないだろうって言ってたのは何処の誰だ?
(こういうところ、アルに似てるよな……)
 たまに。節電するって宣言した時もそうだが、思い立ったら即行動っていうか……
(いや)
 ムカつく同類扱いはやめよう。あいつと一緒にしたら菊が怒るし。考えを払い、慌てて追い掛ける。
「おい…菊……」
 開けっ放しにされていたフスマから部屋を覗くと、早くも菊は居間用のラップトップ(ノートPC)を立ち上げていて、横顔は画面を食い入るように見ていた。
「やはりまだ開きませんね……他のサイトに転載されてるでしょうか……」
 などと、ぶつぶつ言いながら。
「菊。髪……」
「あ。アーサーさん、台所の電気消してきてくれました?」
 え?
「いや……」
「駄目ですよ。節電」
(おい)
 いや、それは分かったが、だから髪乾かせって。俺と違ってすぐに乾く長さじゃねぇんだから。
 ―――と言いたいのだが、こちらを見向きもしない菊には、恐らく聞く耳はない。
 仕方がないので、いったんキッチンの電気を消しに行ってから、戻ってきて、セーザしている菊の背後に座る。ああもう、ユカタ濡れまくりじゃねぇか。
「お前なぁ……風邪引いたらどうするんだよ」
 長い髪を纏め、一つに結ぶようにして水気を拭き取ってやりながら声を掛けると、ええ……と上の空加減の返事が菊から返ってきた。
「大丈夫です。あとでちゃんとやりますから……あ、やっぱりまだちゃんと確定していないのかな……うーん…」
 とか。言ってキーボードを打ち出す。こいつ全然俺の話聞いてねぇな。よし。
「菊」
 これは強行手段に出ても良いって事だろう。ぐっと強く、華奢な両肩を掴む。抵抗出来ないように、
「風邪引きたいってなら手伝うぞ。このままここでヤったら確実だからな。物資がなくて電気もなくて、それでも病院に行きたいって言うなら存分に手伝ってやるよ」
 でも痛くない程度に。耳傍に顔を寄せて、脅す―――すると。
 ぶんぶんと勢い良く、菊が頭を横に振り出した。
「すすすすみません!今すぐ乾かします…!」
 泣きそうな声がする。っとに……
「よし」
 最初から言うこと聞けっての。そんな声出されたムラムラ……じゃない。心がズキズキ痛むだろうが。ぱっと手を離してやる。
 と、恐る恐る菊が振り返った。で、怯えた目で俺を見てから、しゅんとうなだれ、
「ごめんなさい…」
 だと。ああ……
(やっぱ俺の嫁がこの世で一番可愛い)


***


 最後に電気を消してキッチンをあとにし、明かりの点いている部屋へ向かう。そこは菊の自室だ。
「菊。こっちは終わったぞ」
 フスマは開けっ放しだったが、壁をノックして中へ声を掛けると、はぁいと右横の机の下に入っていた菊から籠もった声が返された。
(お前…なんつー格好を……)
 ダチョウじゃあるまいし。いや、何でそんな、机に頭だけ突っ込んで、腰を高く上げる格好になってるかって、理由は分かっているんだが。
(目のやり場に困る……)
 故に、気持ちというか下半身を抑えるために、机から部屋の中に目を移すが、相変わらずカオスな部屋だ。片付いてないって訳じゃないんだが、むしろ今は一昨日から地震が続いているから、普段は壁いっぱいに設置されている本棚の手前に並ぶ、全く必要性が感じられない……まぁいわゆる“オタク”の品がなくなっていて、すっきりしているくらいなのだが。何が何だか、俺には分からない部屋に見える。それでも初めて見た時よりは驚かなくなったが、これは呆れが強くなったってだけの話かもしれないな。
(にしても…さっきからずっと揺れてて、気持ち悪ぃ)
 カップを洗ってた時も何となく揺れてる感じがしたが、ずっとこんな状態の中で菊は平気なんだろうか。平然としているから平気なんだろうが。
 そうして眺めるともなしに見渡していると、ひょこっと机の下から菊が顔を出した。
「すみません、お待たせして。デスクランプの電源が思ったより向こうにあって……」
「いや」
 んなに待ってねぇし。立ち上がって笑い掛けてくる、菊の髪が乱れているので直してやると、菊は恥ずかしそうにはにかんだ。畜生……
(可愛い…)
「台所のほう、有難う御座います。場所分かりました?」
「ああ、大丈夫だよ。言われた通り、冷蔵庫以外のソケット(コンセント)は全部抜いてきた。ガスも閉めた。俺の部屋は、電源は全部オフでも問題ないからそうしたし……あ、一応玄関の鍵も確認してきた」
 その笑顔は犯罪でしかない、と煽られる本心を隠しつつ、言われた通りにこなしてきた事を告げると、菊は更に可愛らしく、笑って小首を傾げた。何ていうかもう、菊の存在全てが犯罪だな。
 ―――という議論はまた別件で行うとして、ちなみに何をしてたのかというと、いつも通り二人でエンガワの戸締まりをして、いつもになく二人で“節電”のために、必要最低限を残して家中のソケットを抜いたりエクステンションリード(テーブルタップ)のスイッチを切ったりしていたところだ。果たしてそんなこと、
「なぁ、こんなことする意味あるのか?」
 甚だ疑問だが。何台買えば気が済むのか問いたい、机の上に用意されていたネットブックを抱えた菊に尋ねると、菊はもちろんとはっきり答えた。
「もちろん。通電されていなければ、多少は消費電力を抑えられます。といっても、月に数円程度のものですが……それでも、しないよりは良いですよ」
「ふぅん…」
 そんなものなのだろうか。いまいち信憑するに足らない話だが、菊がやりたと言うならそれで良いか。確実に、明朝、トースターオーブンが点かない〜!と大騒ぎする様子が見えるんだが。一先ずそれは措いておこう。少なくとも、
「ま、菊が夜更かししなけりゃ、電力消費はかなり抑えられるよな」
 とは思うから。つい笑ってしまいつつ一歩後ろを歩く姿へ目をやると、怨むような目を向けてきた菊の頬がぷくっと膨れた。
「ですから、こうして早く寝るんですっ」
「あーはいはい」
 何とも迫力のない怒り方だ。
 そういう話をしながら、電気を消し、フスマを閉めて、もう一つ明かりの点いている部屋―――寝室へ二人で向かう。
 着くと、菊はネットブックを準備し始めた。俺はというと、フトンは風呂の前に敷いてあったし、菊がすぐに寝るなら本を読んで待っている必要もないし、特別用事もないので、
「上。電気、消すぞ」
「ええ」
 アンドンの電気を点けて部屋の電気は消し、お互いのモバイルと一緒に置いてあるアラームを掛けて、フトンの上にセーザしてネットブックが立ち上がるのを待っている菊の隣に入って寝転がる。菊と付き合いだした頃は、このタタミの上に敷くフトンというベッドの硬さに慣れなかったが、毎日寝てれば否が応でも慣れるものだ。出来る事ならベッドのほうがという気持ちも無きにしも非ずだが、この家は元々菊のものだし、俺もワシツにベッドは似合わないと思うから、このままでも良い。
(菊さえいれば何処で寝ても良い…)
 とも言う。
「さて」
 準備を終えたのか、菊が、スリープモードにさせたネットブックの蓋を閉じ、身体ごと俺のほうを向く。
「この子はこのままここで充電しましょう。テレビと私の部屋のデスクトップの電源は入ったままですが、いざという時すぐに調べられるほうが良いでしょうから。懐中電灯と防災バッグはあちらに用意してありますし、あとは、ええっと……お米もパンも幸い今日買えましたし……大丈夫かな?」
「分かったよ。大丈夫だろ」
 何だか、“あちら”のタンスの前に用意してあるエマージェンシーキットまで示して、子供に教えるみたいに細かく説明してくれる。単にこれは地震に強い国の人間の基本なのか、それとも、もしかして……二日前の昼の時に無茶苦茶ビックリして焦って菊に抱き付いちゃったりしたからなのだろうか……。
(恥ずかしい…)
 忘れてほしい。一昨日はたまたま休暇を取っていて、菊と近くのスーパーマーケットに行っていたんだが、そこで地震が起こり、経験のない俺は、その……結構ビビって慌てふためいてしまって……。
 こういうのは慣れだから仕方がないと菊は言ってくれたが、周囲にいた自国民の男どもはケロッとしてたし、従業員の女性も全然普通に棚から落ちて壊れた商品の掃除とか始めてたし、多分……叫んだのって俺くらいで……。
(くそぅ…)
 居堪れなさがぶり返してきた。
 しかし、菊は本当に気にしていないのか、忘れてしまったように、からかうようなことは言ったりしなかった。
「では、寝ます」
 と何故か宣言してからフトンを捲り、もぞもぞと中に入ってくる。
 ピタリと、さも当然と俺の腕に頭を乗せて懐に身を寄せて。
「お休みなさい」
 見上げて。
 だからさ、何つーか。
「……お休み」
 してくれるのを待っている唇に、軽くお休みのキスをする。と、菊は、照れて目を伏せながらも嬉しそうに笑い、くふくふと俺の胸に顔を擦り寄せてきた。
 ほらみろ、あれだ。親しくなる前は鉄壁だったのに、一度気を許すと一気に甘えん坊になるとか、やっぱそれって可愛いし犯罪の域だと思う。罪を犯したくなる可愛らしさ、というか。
 言わずもがな、俺以外が菊にそんな事をしようものなら、地の果ての地獄の果てまで追い掛けて目に物見せてやるが。
 ―――なんてことを、明かりを消して、懐の菊を抱き枕のように抱えて考えていたら、何か。
(やべぇ……)
 凄ぇヤりたくなってきた。素肌じゃないけど腰辺りに触れてくる太腿が大いに気になる。
 でも、昨夜も今日は休みだからって遅くまでってか明け方まで付き合わせちまったし、何より今夜は早寝する宣言をされているから、そんな事をしたら多分、明日は一日中口利いてくれなくなるだろうから。
(我慢しよう)
 とりあえず我慢出来るところまで。シャンプーの匂いに余計触発されないこともないが、菊の髪に頭を寄せて目を瞑る。そして、寝よう。寝てしまおう。
「………………………………………………………………」
(………………………………………………………………)
………………………………………………………………。
………………………………………………………………つか。
「眠くねぇ」
 全然、微塵も。ムラムラしてるからとかじゃなくて、普通に全く眠くない。目を閉じているより開けているほうが楽なほど。
「実は…私も……」
 菊も同様らしく、小さく声がする。
(そりゃそうだよな)
 菊なんて、今から活動時間だ!ってくらいの時間帯だもんな。俺だって12時に寝るなんて、酷く疲れている時くらいしかないし。
(ああ、そうか)
「なら、折角だからヤ

 ぺちんっ―――。

 ―――てッ!」
 言う前に、頬に衝撃が走る。
「結構です。遠慮します。大丈夫です、問題ありません」
 加えて、立て続けに出てくる、お得意の“いりません”。
「明日はアーサーさんも早起きしなきゃいけないでしょう?」
 しかも、トドメの正論。輪番停電の影響で電車のタイムテーブルが大幅に乱れるだろうから、ってことで、正しく明日は一時間早く起きる―――起こされるんだが。
「分かってるよ。ていうかまだ何も言ってねぇだろ」
 正確に言うと、ヤ、までしか。大した痛みもないが叩かれた頬を摩りながら文句を付けると、薄暗い中で菊がじとりと睨み付けてきたのが見えた。
「それくらい分かります。分かってますから、何考えたんだぁ?とか、下らない質問、しないで下さいね」
「―――しねぇよ!ガキじゃあるまいしッ」
 誰が。するか。
(くそぅ…)
 何か知らんが先に封じられた。何でこういう、いらないことは強気なんだ。エッチの最中なんて、ふるふるビクビク震えて泣いて許してって縋ってくるくせに。納得出来ねぇ、且つ悔しい。
 ―――だから、ちょっと虐めてやろうかとかとも考えたが、やめた。それこそ、ここで挑発されて乗ったら、あとで思った通りだと恨まれ兼ねない。絶対しばらく口利いてくれなくなるだろうし。あんな経験は一回でいい。
 なので大人しく。
「じゃあ……羊でも数えるか…」
 こんな暗い中で出来る事といえば、他にはこれくらいか?潔く諦めて、このお返しは菊が寝てからたっぷりするとして、今は表向きそういうことにしておくと、睨んできていた菊の両目が、ぱちっと大きくなった。
「でしたら、何かお話して下さい」
「は?」
 何だ、急に。どうしてそうなる。
 どういう流れでその提案に流れ着いたのか分からず、知らず怪訝にしてしまうと、菊は愉しそうに目を細めた。
「いえ、ほら。日本人の私には“sheep”と“sleep”は馴染み深くないので。どうせ声に出すならお話するのも一緒でしょう?」
「え?あ…うーん……」
 どう…だろう。羊を数えるのと何かを話すんじゃあ、かなり違うような気がするんだが。
 でも、まぁ。きらきらと期待の籠った目を菊が向けてくるので。
「―――じゃあ、そうだな…スコットランドにある城で……」


 十五分後。


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜も、アーサーさんの馬鹿ぁ!」
 がばっ、と菊が枕を抜き取り、顔目掛けて投げてくる。
「ぇえ!?おい、何だばふっ…!」
 ――――――地味に痛い。というか、上から押さえ付けられているので地味に苦しい。
(何だよ一体…ッ)
 俺、こんな目に遭うようなこと話したか?
「酷いじゃないですか!そんな怖い話するなんてっ…今日はもう眠れませんよ〜!」
 そういうことらしい。枕の向こう側から、菊の悲痛な声がする。
 が。
「―――っの、だったら途中で言えば良いじゃねぇかッ。お前だって止めなかっただろ!?」
 そうだ。それでそれで、って子供みたいに続きをせがんできたのは菊だ。途中で、怖いからやめてって言われたら、俺だって……いや、どうだろう…怖がる菊は可愛いから止められなさそうな予感はするが、一応止めると仮定して。そもそも菊が怖い話嫌いだったら、こんな話はしていない。こういう話は好きだ、ってよく言ってるから話した訳で。
(にしたって、現場に行かないでゴーストハントの話したって、そんな怖くねぇだろ)
 と思うんだが。
 ぼふぼふと、退かした枕でまだ、起き上がった俺の脚を叩いてくる菊の顔はやや泣きそうで…ちょっと悪戯心をくすぐられる。
「そうですけど!確かに面白かったですけど!でも、好きと怖いは別物なんですぅ!」
「はぁ…」
 そういうものだろうか。俺にはその違いが分からないが、ふにゃらふにゃら、菊が八つ当たりしてくる。何かもう、そんな情けない姿を見せられたら怒る気も削げるってんだ。溜息混じりに返事が落ちてしまう。可愛いって言ったら、いや可愛いんだが。
(要望通り話したのに怒られるって……)
 時々こういう理不尽なこと言うよなぁ、菊って。アイツらに比べたら微々たるもので、全然許せる範囲内だけどさ。呆気に取られてしまい、ぼんやりと駄々を捏ねる様を眺めるに留まる。
 すると、しばらくして突然菊の手が止まった。暗く俯き、長い髪が前に下がってきていて、菊のほうが余程ホラーだと思う。ちょいビビりつつ見ていると、突然真っすぐ、すくっと菊が立ち上がった。怖えぇ。
「アーサーさん」
 声も怖い。顔は見えないが、多分見下ろして呼ばれる。
「ちょっと、付き合って頂いても宜しいですか?」
(やべぇ)
 真面目に怖い。まんまJホラーのようで、ゆらりと立つ姿が、凄く。なんか床も揺れてるし。これは菊の所為ではないが。“どうか”とお願いの形なのに、完全に有無を言わせずって雰囲気で逆らえない。やむを得ず、
「ぉ、おう……」
 従う。
 立ち上がると、音もなく菊が歩き出した。
「ついてきて下さい」
「ぁ、ああ……」
 本格的にヤバいかもしれない。早いところ謝ってしまわないと、ここから先を想像すると、ちょっとドキドキ……決して、断じて!女王様風の高飛車でドエスな菊も良いなぁ…とか考えてドキドキしたんじゃなく!してしまう。
(俺、何されるんだろう…?)
 バクバク動く心臓を押さえつつ、静かに歩く菊についていていく。
 程なくして、遠い距離でもなくて、菊が止まる。場所は、
(トイレット?)
 ―――え?トイレット?
「暫しお待ちを」
 底冷えする声で俺を止めてから、ドアを引き、菊がトイレットの中に入っていく。
 ん?あれ?ひょっとして、怖くてトイレットに行けなくなった……ってことか?
(…………ふぅん)
「………………おーい、そこはついてい

 バンッ―――!

 ―――かガフッ…!」
『破廉恥!変態!馬鹿!最悪!こっちくんな!』
 ……乱暴に開けられたドアの向こうから、声だけがする。そしてまた閉まるが、今、凄ぇ勢いでいろんなこと言われた。英語じゃないし早口だったから何言ってるか聞き取れなかったが。まず間違いなく悪口だろう。
 しかし、それより。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」
 鼻いってぇ!
 ドアに顔近を付けていた俺も馬鹿だが、にしても盛大にぶつけられた。余りの痛みに、鼻を押さえたままその場にしゃがむ。うう…これ、あいつ絶対分かってドア開けただろ!?
(先に部屋戻ってやろうか)
 なんて考えが一瞬過ぎっても、尤もだと思う。
 けど、怖くて一人でトイレットまで行けないとか、微笑ましい事態に陥ってる菊を置いてっちまうなんて、少し可哀想な気がする。
 それに、元を正せば、止めなかった菊にも責任があると思うが、半分はゴーストハントの話をした俺にも責任があるんだろうし、ドアだって、ぶつかると分かってて開けたと思われるが、顔を近付けてた俺も悪い訳だし。
(いてぇ…)
 納得出来ねぇ。このお返しはやはり菊が寝てからすることとして、しゃがんだまま壁に寄り掛かって待つ。
 ―――恐らくそれは、ものの数十秒、長くて一分という時間だったと思う。だが、そうして一人で静かにしてみると、深く深く、静かに地面が揺れているのが感じられた。
(怖い)
 本能で恐怖する。ここでこんなに怖いんだから、震源地近くなんてもっと恐ろしいんだろう。まだまだ揺れてる!って分かる揺れが続いている訳だし、これは俺が地震とはほぼ無縁の国で育ってきたから恐怖してしまうってんじゃないと思う。
(菊も怖いのかな……)
 一昨日に体験した震度五については、初めてだったから驚いたとは言っていたが、その後続く震度三くらいはわりとあるからそうでもないって、平然としていた菊だけど、菊だって本当は怖いのかも知れない。あんまり俺がビビるから、普段通りに振る舞ってくれているだけで……いや、まぁ。揺れるたびに何処だ幾つだって騒ぐのを見てると、そんな要素は微塵も感じられないんだが。
(でも…)
 もしかしたら、怖くて、気を紛らわそうとして騒いでるのかも知れない。
 なのに、俺は怖い話なんかして。
「……ッショ…」
 馬鹿か俺は。たとえ菊がその手の話を好きだからって、何も今夜しなくたって良いのに。何でこう上手く出来ないかな、俺って。
「………………………………………………………………」
 ―――優しく、しよう。
 今夜はもう菊の嫌がることをするのはやめよう。二日前、パニックする俺を宥めようと優しく抱き締めてくれいた菊のように、俺も今夜は菊のことを抱き締めて寝よう。
(…って、それ毎晩と変わんねぇか)
 と。
 がちゃ、っと今度は普通にドアが開いた。
「お待たせしました」
 言いながら、出てきた菊は、何処となく恥ずかしそうだ。そりゃ、本国ならミドルスクールだって言っても疑われないほど幼い容姿でも、実は大分前に成人している大人が、夜中にトイレットへ行くのが怖いからって誰かについてきてもらうなんて、冷静に考えたら恥ずかしい話だ。
 でも、菊はいつだって俺の醜態を笑ったり馬鹿にしたりしないし、だから俺も笑わない。
「ん」
 立つと、ドアを閉めた菊が申し訳なさそうに見上げてきた。
「すみません。お顔、大丈夫でした…?」
「え?ああ……何ともねぇよ」
 そういやそうだったな。微震の恐ろしさにすっかり忘れていた。もう痛くねぇし。
 ただ―――怖がっていたことが分かってしまったようで、ついぶっきらぼうに返してしまっていた。
 菊が、どうしようって困った笑みを浮かべる。
(あ)
 違う。違うだろ、そこは。優しくしようって決めたばかりじゃないか。どうしてこう、俺は……じゃない。反省しているうちに間が空いてしまう前に、どうにかしろってんだよ。ええっと、そうだな。手でも握るか?
「……ほら」
(――――――って!)
 何でここで気の利いた台詞一つ言えないんだよ俺は!
 思い付かないまま手を差し出すと、一転して菊がきょとんとした顔をした。ああもう面倒くせぇ!
「何か……」
「別に」
 説明するようなことでもないので、訊いてきた菊の手を自分から先に取る。
 というか、初めからこうすれば良かったんだ。何も言わなくても、先に手を繋いでしまえば理由は明白だから、あんな不思議そうな顔はされずに済んだろうに。どうにも己の手順の悪さが腹立たしい。が、手を取ったので、歩きだす。
 あのぅと控え気味に菊が声を掛けてきた。
「あの…もしかして怖くなっちゃったんですか?」
「………違う」
 何故そこで俺になるんだ。
「怖かったのはお前だろ?」
 だったはずだ。故に俺がついてこさせられた訳で、なのに何故自分じゃなくて俺ってことになるんだ。意味分からん。
「それはそうですが…」
「だろ?」
 …っと。無意識にまた不機嫌な声になっちまってる。怒ってるとか、全然そういうんじゃねぇのに。本当に、こういう時の自分の不器用さがムカつく。まずすべき事は何だ?
「……悪かったな。変な話して」
 部屋に戻り、場も変わったし、フトンに座ったところで、差し当たり謝ってみる。これが行うべき正しいことなのかは分からないが、さっき菊は物凄く怒ってたっぽいから。菊もちゃんと鼻ぶつけてくれたこと、謝ってきたしさ。気まずくて目は逸らしてしまったが。
「いいえ!そんなっ」
 一応気持ち通りに述べると、少し焦った様子の菊が目の端に見えた。
「こちらこそ、折角アーサーさんがお話してくれましたのに、詰まらない事で腹を立ててしまって……すみませんでした」
 と、三つ指ついて謝ってくる!?
「え!?あ、いやっ、そんな、別に怒ってねぇから…!」
 いやいや、ここは俺が謝るべきところであって、何で菊が謝ってくるんだ!?
 ええっと、こういう時はどうすれば良いんだ?前にも似たような事があって、そん時は確か……
(いや……)
 こんな時にすべきことなんて一つだろう。
 ―――深々と下げられている菊の頭を起こす。
 手を握って、身を乗り出して。
 やっぱりここは、仲直りのキスだと思う。ふっくらと柔らかな唇に触れ、離れると、菊は小さく笑った。
「寝るか」
「はい」


***


 だがしかし。
「………眠くねぇ」
 どうにしたって、眠くねぇ。時間的にはそろそろ眠くなってきても良いんだが、先程騒いだ所為か、眠くなる気配もない。
「実は…私も……」
 菊も同様らしく、腕の中から小さく声がする。
 よし、折角だから。
「………………………………………………………………」
 ……と思ったが、やめた。今夜は菊の嫌がることはしないって、決めたから。叩かれたくもない。
 そうですねぇ、とぼんやり菊が呟く。何かがそこにあるように、俺の頭の上を見て、
「では、今度はしりとりでもしましょうか」
「は?」
 何だ、急に。どうしてそうなる。
 つか。
「この場合、今度はお前が何か話す番じゃないのか?」
 だろう。さっきは俺が話したんだから、今度は私って。指摘すると、うーんと菊は唸り声を上げた。
「オタクトーク全開で良いなら、ネタは沢山ありますが…」
「いらねぇ」
 即答だ。菊は可愛いし優しいし料理は美味いし最高の嫁さんだと思うんだが、どうしてもそこだけは理解出来ない。多少俺も感化されて、漫画を読んだりアニメを見たりするようになったが、菊のそれは次元が違う。そんな話を全開でされた日には、数学の論文読んだほうがまだマシだって気になる。
「きっと頭使えば眠くなりますよ」
「そうか?」
 却って目が冴えるような気がするんだが。
 でも、今夜はもう、俺から何か話す気分にはなれないし。
 よって。
「分かった。……英語?日本語?」
 溜息一つで諦めることにする。念の為言語を確認すると、菊の目が弧を描いた。
『日本語でおk』
「げ」
 マジかー……シリトリは俺が日本語を覚えるために時々やるゲームだから、十中八九そうなる予感はしていたんだが。たまには英語にして欲しいよなぁ。
「ハンデとして、パスは三回。アーサーさんから始めて良いですよ」
 と有利になりそうな条件をくれるが、この条件でも勝った例は一度もない。そういうことに左右されるようなゲームじゃないからな。問題は語彙の記憶量だ。
(まぁいい)
 とにかく考えよう。有利にならないとは分かっていても、いつも『リンゴ』じゃ学習能力がない。何か……ああ、そうだ。
「………じゃあ」
 こういうのは駄目だっただろうか。
―――じっと見てくる菊の頭に顔を寄せる。額に触れ、髪を撫でてしまうのは癖で。
『愛シテル』
 今夜は嫌な思いをさせてしまったから、その分だけ目一杯気持ちを込めて。うん。たまには日本語で言ってみるのも良いかもな、新鮮で。
 そう思いながら続きを待っていると、前触れもなく突如として菊が起き上がった。
で。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜も、アーサーさんの馬鹿ぁ!」
 がばっ、と枕を抜き取り、顔目掛けて投げてくる。
「ぇえ!?おまっ、何だばふっ…!」
 ――――――地味に痛く、上から押さえ付けられているので地味に苦しい。
 というか、何故に二度も同じ目に遭わなきゃいけない。
『欧米文化乙!ログアウトしろ!』
 枕の向こう側から、悲痛な声に乗せた意味不明な言葉が聞こえる。日本語で、まず間違いなく悪口だろうってことは分かったが、それが分かって何になる。
(何だよ一体!)
 怖い話しても愛シテルって言ってもぶっ叩かれるってどういうことなんだよ!
節電はともかく、明日は絶対早寝しねぇ!





−END−
オカヤマサル









オマケ。


 翌朝。
「あー……」
 朝日が眩しい。
 つか、眠い。顔を洗って歯を磨いても、まだ。一時間早く起きるだけでこんなにも違うものだろうか。
(何だかんだ、夜遅くなっちまったしな…)
 結局。菊がシリトリに納得しないから。真っ赤になってポコポコ湯気を出して怒る菊は可愛いが、愛シテルってそんなに言って悪いことだろうか。まぁ……俺も言うの恥ずかしいけどさ。
 ―――と、そうした言い合いをしていたために、寝るのが遅くなってしまったのだが。
「駄目だ…」
 眠い。一向に目が覚めないから水で顔を洗ってみたものの、さっきから欠伸が止まらない。地震に遭って以来、ぐっすり眠れた感もねぇし。このままだと確実に仕事中、寝る。
 無論そんな失態は許されない。なので。
(コーヒーにするか…)
 余り好きではないんだが、飲めないというほどのことでもない。あの苦味は目覚ましには持って来いだ。
 という訳で、朝食と一緒に用意してもらうために、着替える前に菊のいるキッチンへ向かうと、何やらバンバンと叩く音が聞こえてきた。俺より三十分も前に起きているのに元気だな、っていうか、まさか。
「何やってんだ?」
 短いノレンを分けてキッチンを覗くと、カッポーギを着た菊がトースターオーブンと格闘していた。
「あ、すみません。朝ご飯まだなんです。オーブンの調子が悪くって…」
 ジジジって音は鳴るんですけどね、とまた、ホワイトブレッドを入れ掛けたトースターオーブンの上を叩く。
(やると思った…)
 まったくもって期待を裏切らないな。前から思っていたんだが、どうして菊は調子の悪い電化製品を叩いて直そうとするのだろう。余計に悪化するとは思わないのだろうか。
「菊」
「はい?」
 じゃない。何でしょうという顔付きでこちらを向いた菊の前に、人差し指を立てる。
で、そのまま、棚の後ろへ向けて。しゃがみ。
「あ!」
 ようやく気付いた声がしたが、遅い。ソケットのスイッチを―――押す。
 立って向き直ると、菊の顔は真っ赤になっていた。何も言ってないのに、目が合っただけで俯いてしまう。
「ぇと……今日…お弁当…電子レンジ…使わなかったの……」
 何故か片言で、決まり悪そうにちょこちょこと指先を弄りながら、伺うようにちらちら見てきて。
 だからさ、何つーか。
「…今朝は紅茶じゃなくてコーヒー頼む」
 ソケットに関しては、一先ず寝惚けていたということにして、触れないでおこう。眠いところを俺より早く起きて、ベントー作ってくれているんだし。泣きそうになっている頬を撫でると、仔犬のヨーキーのような目で見上げてきた。ああ……畜生!
(どうやったって俺の嫁がこの世で一番可愛いだろ!)





−END−
オカヤマサル




 元々このお話はまだ震災ショックでボーゼンとしてた頃、心配してくださったオカヤさんが元気づけのためにくださったものでした。直接の被害は無かったものの現実があまりに苛酷で精神的にちょっとアレだったこともあり、ものすごく励まされて涙が出るぐらいありがたかったです。
 ただ事態が事態ですし、さらに微妙なジャンルということもあって、せっかくご好意でくださったのに御迷惑おかけしたら申し訳ないと、もったいないけど表には出さないでおこう、ということにしてました。でも状況が少し変わってきたし、私一人で楽しんでるにはやっぱもったいなさすぎるので再度掲載のご許可をいただいた次第です。オカヤさん、勝手なことばかり言って申し訳ありません。


 そういうすったもんだをしてでもどうしても!!皆さんにも見ていただきたかったのです。このアーサーさんの紳士っぷり際立つかっこよさと菊さんの大和撫子な可愛らしさを!!!私が求めて止まず、そしていまだに(たぶん永遠に)到達できない理想の境地ですよ。

 ああもうアーサーがかっこよすぎてどうしていいやら。メイド服も喜んで着るってもんです(菊さんが)。さらにオタクで血眼になってる菊とそれを引いて見てるアーサーの会話が大好きなんで、もうどうしろと(知るか)。力強く節電を訴える菊さんに同意しつつ冷静に突っ込むアーサーさんが素敵すぎて生きてるのが辛い。小動物みたいな菊さんが可愛すぎて生きてるのが辛い。さらには言うこと聞かない菊さんをちょい脅すアーサーさんがかっこよすぎてショック死しそうになりました。
 ていうか菊さんの髪の毛自然に乾かしてあげようとするアーサーさんの姿を連想したら、やだ何この眉毛かっこいい・・・!いやいや、眉毛なんて言ったら妖精の呪いがかかりそうだから紳士か。

 オタクの部屋ってのは必要性の無いものにあふれてるんですよ紳士。とかその辺は菊さんに同調しつつ、珍しく下心なく紳士がお風呂誘ってるんだから一緒に入ればよかったのに!と激しく思いました。でもこんなに警戒するってことは一緒にお風呂=通常運転でアレな流れなんでしょうね。それこそが紳士クオリティですから仕方ないともいえます。むしろ本当に何もしなかったら不能にでもなったか?と不安になります。

 つーーーーーか嫁が可愛すぎるんですけど!!!!!
 寝床でちゅーねだるとか、私を萌え殺す気ですか菊さん!!!良いよな、気を許しちゃうと一気に甘えん坊丸出しになるって・・・。うちのアーサーさんなら迷わず監禁して二度と自分以外の人目にはさらさないと思います。・・・・こんなだから駄目なのかうちの眉毛は・・・。
 ところでさらりと紳士が料理アピールしてるのが非常に気になりました。菊は「日本には『男子厨房に入らず』という言葉がありまして」とかもっともらしいこと言って絶対台所に入れないんだろうな。

 お話ねだる菊も可愛いーーーーなぁーーーーー!!!紳士の怖い話はガチで怖そうなので、誰も菊さんを責められないと思います。怖いだけでなくて語ってるうちに霊現象の一つや二つは起きてそうだしな。トイレぐらいついてってやれ紳士!と思います。
 紳士は紳士で地震に脅えてるようですが、スーパーでうろたえる紳士を想像すると微笑ましい気持ちになります。こんな人いたら満面の笑みで見守るぞ。

 そして何かやっぱり空気読めてるようで読めてない紳士。そんなふうに突然紳士っぷりを全開にされたら菊でなくても恥ずか死ぬと思います。紳士がことあるごとに嫁の可愛さを心の中で叫んでますが、嫁は嫁で似たような感じになってんだろうなと容易に想像できます。チクショーラブラブ夫婦め!もっともっと幸せになるがいい!!

 さらにとどめのオマケで魂持ってかれました。菊が・・・菊が可愛すぎて生きてるのが本当に辛い・・・!!!1日でいいからアーサーに代わりたいです。ほんでもって菊さんに子犬みたいに甘えてもらんだ・・・!!

 夢と希望と萌えがたっぷり詰まった素敵話をくださったオカヤさん、本当にありがとうございます!!

 気がついたら気味悪いぐらい長文感想で失礼いたしました・・・。読み返すたび滾るものでつい。



佐吉

20110907